2話
街へ戻るとサンジは目についた店のおやじにすぐ尋ねた
1時間ぐらいさまよって先ほどの広場についたのに
サンジが前を行くと5分で街に戻れた。
すげぇな、とゾロは他人事のように思う
「お、おいおやじ!!この子知ってるか?」
「ん?あ、ユイちゃんじゃねぇか。どうしたんだ?背負われて」
「そこんところの広場に倒れてたんだ!!おうちはどこなんだ?」
「そ、そうなのか!?え、えっとすぐそこだよ、連れてってあげる」
「さんきゅ」
家につくとすぐにその子のお父さんと思われる人が出てきた
「ユ…ユイ!!ど、どうしたんだ」
「あ、父ちゃんか?」
「あ、あぁ…ユ、ユイは…」
「そこの広場で倒れていたんだ、だから街に連れて来たらそこの八百屋のおっさんが…」
「ありがとう!!感謝するよ、おい、アニー!!」
父さんが家の中に向かって叫ぶ遠くの方から
ユイよりも少し年上くらいの少年が出てきた
「どうしたんだよ父さん」
「ユイが倒れたらしいんだ、医師呼んできてくれ」
「…分かった」
表情などは何も変わらなかったけど
すぐにコートを羽織って出て行った。
結構心配しているんだなって思った
「おいコック」
「あ?」
後ろにいた剣士の存在をすっかり忘れていた
「どうすんだ?」
「んー…心配じゃねぇか」
「そうだが、いいのか、長居して」
「でもこのまま帰っていいのかな」
二人でごちゃごちゃじゃなしていたら
タイミングよく「上がってくれ」っていう
父さんの声がしたから上がらせてもらった
***
「……まぁよかった」
「なんか、作ってやろうか?」
「え?」
「俺、コックなんだ、船の。だから」
「いいのか?」
「ユイちゃんのためだ」
「……なにからなにまでありがとう」
「いや、別に…」
ユイちゃんのお兄さんのアニーが連れてきた医師によると
この島ではよくある病気らしい
でも酷く放置しとくと死に至ってしまうらしい
「かゆ…でいいか?」
「あぁ、なんでもいい」
そういうとコックと父親は
隣にあるキッチンに行った
料理を始めたコックを横目に
部屋中央の布団で寝ているユイに目をやる
すると向かい側の壁に背中を任せて座る
アニーと目が合った
「…名前、なんていうんだ」
「俺か」
「あぁ」
「ゾロだ」
「……海賊狩りの?」
「今は海賊狩りはしてねぇ」
「……そうか」
毎度毎度交わされる会話もそろそろ慣れてきた
つか俺は海賊なのだから
そろそろ手配書のあの文も変わらないのだろうか
「じゃああの兄ちゃんも海賊なのか?」
「あ?…あぁ、あいつか」
キッチンで楽しそうに料理をする金色頭に目をやる
相変わらずのアヒル頭だ
「……そうだが、あいつは海賊らしくない海賊だ」
「は?」
いつでも自分より他人で
女に弱くて
でもなんだかんだで誰にも優しくて―…
「……別になんでもねぇ、つか怖くねぇのか?」
「え?」
「海賊ってわかって。それに俺はあれだ、賞金首だ」
「……特に、まぁこの島の人は海賊、とかそういうものより人で判断するし」
「そうか」
「海軍も来ないし、あんまり。」
何となく沈黙が流れる
こいつも俺みたいにそんなに話す方じゃないようだ
寝るユイをみつめている
「……そういや、はい」
マスクを投げられた
「なんだ」
「しといて、これ、感染するから」
「え、早く言えよ」
あわててマスクをする
「お前は」
「俺は一回かかったから、これ一回かかるともうかからないんだ」
「……そうか」
「コックさんも」
「あぁ、」
「粥できたぞー」
キッチンから奴が鍋を持ってきた
なんか、母さんみたいだなって思った
続く
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