3話


「……そういや」

ユイに食事をあげ終わったコックがユイの寝顔を見ながらつぶやいた
しかし自分で言った癖に言ったあとはっとした顔をして
極まりが悪そうに横目で俺を見た


「どうした」
「…母さん、いねぇのか?」
「亡くなったんだ、この病気で」


アニーがすぐに答えた
父親は俯いたまま何も言わない


「そ、そうか……」


コックは黙って俺の隣に座りなおす
誰もしゃべらなくなった部屋は何とも空気が重い


「じゃ、じゃあ俺たち帰るよ」
「…おう」
「あ、ちょ、ちょっと待ってくれ」
「ん?」


そうコックが言うと父さんがコックをキッチンに呼んだ
仕方なく俺は玄関で待つ
一寸するとコックが紙袋を持って戻ってきた


「それ、どうした」
「ん?お父さんからのお土産だ。お礼だとよ」
「何があるんだ?」
「んー、食いもんとか。まぁ俺ら貧乏海賊にはありがたい」
「酒は」
「お前はそれだけか」


コック泣かせだなー、お前は。
そう歩きながら言うこいつはなぜか俺と目を合わせなかった
なんでだろう、なんて思ったけど
まぁ病人を介抱してテンションあがるやつはいないだろう


「……」


まぁそれでもこいつが笑っているのなら
俺は気づかない方がいいのだろう
こいつはあんまり踏み込まれるのが苦手な奴だからな


***


「んーじゃぁ出航するわよー!!」
「「「おー!!」」


無事一週間たちログもたまりかわいらしい海賊船は港を出た
結構いいところだったなー、なんてチョッパーとウソップが話してたり
もうルフィーは”船長席”に構えて次はどんな島かな、なんて呟いている

…コツコツコツ

コックの足音。
クルーが少ないこの船は足音だけでも、
もっと言えば息の仕方だけでも誰だかわかる


「おーいクソ剣士」
「…なんだ」
「毒見しろ」
「……別にいいが」


おそらくまた新しい食材でも入ったのだろう。
いつもこいつは毒見と称して俺に味見させる
こいつが作るのは何だかんだでいつも美味しいし
不味いなんてことないから別に構わないが


「…味噌汁」
「ん、そう。なんか変なもんおまけでもらってよ」
「ふーん」


味噌汁は基本好きだ
何が具でもたくさん飲める
少しうれしくて思いっきり一気飲みした
……あ、れ。


「……どうした」
「苦い」


こんなの初めてだ。
こいつが作ったものでこんなに苦いなんて。
でもちょっとはっきり言いすぎたか、なんて思って奴の顔を見たが
別に気にしてる様子でもなくむしろなんか安心した感じだった


「……ふーん、苦いか」
「…ま、まぁ。でも味噌汁はうめぇ」
「でも全部飲んだな」
「つかお前作ってて味見しなかったのか?」
「え?ま、まぁな。味噌汁あんま俺飲まねぇし」
「……あ、そう。」


何となくおかしいな、なんて思ったけどまぁいっか、と思って
普通に器をコックに返してレモン水をもらって鍛錬を再開した



続く
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