05 涙
キッチンに入ると鼻に良い匂いが届く
昼間甲板にいると洗濯物を干す匂いがする
週に一度くらいいきなり部屋がきれいになっ
ている
これらはすべてこいつが来てからで。
それまでの俺ら男三人組は家事とかには全く
関心の欠片もなくまるで母親のように動くこい
つに驚きもしたものだ
でもそれは今となっては日常風景のひとつで
こいつが昼間家事をするのをチョッパーがた
まに手伝う程度で専らこいつが全てやっている
こいつ曰く"身の回りが綺麗じゃなければ旨い
ものも不味くなる"らしくそれを嫌がる素振りも
ない
なのでなぜかこの船は父親がナミで母親がこ
いつと行っても間違ってない感じの立ち位置に
なっておりどこかの国で聞いた母の日と言うも
のはこいつと為にあるのだと思う
「……まぁだからサンジの誕生日までに島には
つかなさそうだしまだ次の島まではあるから今
の船の状態で祝わないといけないんだろ?」
「そうよ、だから各自で用意しなさい、わかった?」
「はーい」
とまぁこんな会話があったのが一週間前
そして今、こいつは何故か固まってる
「サンジ?」
「どしたのサンジ?」
「おっおい、サンジどーした!?」
ルフィ、ウソップ、チョッパーはナミ達みた
いに島で買い物したりする訳じゃないか
らあげられるようなものは持ってなかった
らしい
だから悩んだあげく手紙にしたらしい。
といっても一番上にお誕生日おめでとうと
書いてあり各自の文はルフィは大きく「い
つもありがとう!!これからも飯作ってくれ!!」
となんとも簡潔でウソップは文字の大きさ
は違うものの書いてることは似ている。
チョッパーは「いつも船内のことやってくれ
てありがとう。体壊さないでね」とまぁこん
な感じだ
なかなか率直でいいんじゃねえの?とこれ
でいいかと相談されたときは言ったがなん
か受け取った本人は固まってるしどうなん
だろうか
渡した三人もこいつの顔を覗きこんでいる
すると。
「ち、ちょ、コック…!?」
「サンジ?」
いきなりこいつの蒼い目から涙がこぼれ落
ちた。
さすがにこれには俺も驚いて渡してないの
に声をかけてしまった
「ありがとな、ルフィ、ウソップ、チョッパー」
「え、あ、おう!!」
「この手紙、大事にするから」
そういって笑ったこいつの頬を流れる涙は
今まで見てきた涙のなかで一番きれいな
涙だと思った
END
ゾロは何をあげたんでしょうね。
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