7 両手いっぱいの花束を




「………あー、このクソ野郎」



今日は11日、今日は俺の誕生日だ
今は花屋にいる
目の前でこいつはぶつぶつつぶやきながら
花を見ている




「…ったく、なんで俺が野郎なんかに花を…」




ちょっと言葉にカチンとはするがいつものことだ。
聞こえないふりをしてこいつが見ているのを見ていると
少しだけ心が和らぐ。

小さな黄色い頭がひょこひょこ動いていて。
あひるだ、なんてよく言ったがひよこもありかもしれない





「…あー、おい、おい!!」

「……あ?」

「あ?じゃねぇよ、なににやにやしてんだよ、きもちわりぃ」

「あぁ!?」




それだけ言うとまた花屋の奥に入っていった
さっきからぶつぶつぶつぶつ文句ばかり垂らしているけど
なんだかんだで店員と楽しそうに花を見ながら話している



……まぁ店員が女ってのもあるだろうが




「おーい、まりも、終わったぞ」

「お?あ、おう」

「んだよ、てめぇ。花が欲しいとか気色悪いこと言っときながら俺は放置かよ」





まぁ確かに花が欲しいって言ったのは俺だけどな
あ、いや、俺に決してそんな乙女な思考があるわけじゃない
ちょっとだけ、したいことがあるだけだ


まぁだから考え事していてこいつを放置してたってのもあるが
別にふてくされなくても…ってん?




「お前、一緒にいなかったから怒ってんのか?」

「は、は!?んなわけねぇだろうが!!」




どうやらそうらしい


昨日、ようやく思いが通じ合って見事恋人となれたこいつは
結構な照れ屋だということが判明した


だからか明らか「怒ってます」という感じで一人で歩きだしていて
馬鹿だなぁ阿呆だなぁとか思いながらもやっぱり…




「にやけてんじゃねー!!」

「おい、つかさ」

「あ?」

「なんで、それ、選んだんだ?」




こいつが両手いっぱいの持っているのは
なんか白い感じでチューリップじゃないけどそんな感じ
…花には詳しくない




「これ、か?」

「おう」

「これ、シクラメン。チューリップとか言うなよ、全然ちげぇし」

「んなわけねぇだろ」

「つか、両手いっぱいとか、はっきり言って邪魔なんだけど」

「そうか?」

「なんでこんなに欲しかったんだ?」

「別に」

「別にじゃねぇだろー」





なんとなく、なんとなくだけど。
こいつはとってもきれいだから、花とかきれいなものに囲まれたら
もっときれいになるのかなーなんて思ったけど
この時期花畑なんてねぇし
だからたくさんの花を持ってもいいんじゃねぇかって思った



ただそれだけ





「ふーん、お前って結構見た目によらずロマンチストなんだなー」

「は、」

「口に出てたっつーの、ブツブツブツブツ怖かったし途切れ途切れだったけどな?」




ギャハハと笑いながら前を歩かれて何とも悔しい




「あー、ぞろ」

「あ?」




前を歩くこいつはいきなり立ち止まって
こちらを見ずに話しかけてきた




「色によっていろいろと違うらしいけど」

「は?」

「シクラメンってさ」

「あぁ」

「花言葉、きずなだってよ」




そういって振り向いて「結構俺もキてるわー、」
と言いながら頬を赤くしたこいつが花を持ってる姿は
やっぱり絵になっていた








(おめぇも結構ロマンチストだな)

(女の子もそういうの好きだからなー)

(お前、叩きのめすぞ)

(暴力はんたーい)








続く





お久しぶりのゾロ誕続き
今年中には終わらせます、
あと2話ですしね



今年の漢字は「絆」らしいです
震災のこととかいろいろありましたしね



ゾロサンの間の絆は永久不滅だと思います
やふやふー!!



でわ、あと少しだけお付き合いください



20111221 景夜,



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