無力

もう、よくわからない。なんで俺はこんなと
ころで、こんなことを、こんな人々に。
「………っ、」
いきなり国から徴兵されて、どっかの民族
をつれてきた収容所でソイツらをただ酷く
使って、働かせて、弱らせて。
俺は、なんで、こんなことを。
「………ごめん、なさい」
上の言う通りに渡された棒でこいつらを叩い
て、でもこいつはなにも言わずに謝って。
こいつらが何をしたって言うのだろうか。きっ
と、ただののどかに暮らしていた住民。悪い
のはこの世界、上にたつ人々のただの私欲。
こいつらは心の中ではなんで俺らが、なにも
悪いことしてない、なんで、なんで、なんで。
そう考えているはず、なのに。


「お前、大変だな」

夜中。さんざん働かせたやつらを狭い部屋に
押し込んでそれを見張る俺。真っ暗な中俺の
持つランプひとつが唯一の光。そんな中話し
かけてくるやつ
「………なにがだ」
「こんなところで働かされて。嫌だろ?」
「お前の方が…だろ。一日中働かされてあげ
くのはて寝るところはこんな狭いところで」
「まぁ、な。でもお互い様だろ?」
なんで、そんなことが言える。昼間、お前の
体に散々痣を作らせた俺に。
「……俺は!!ちゃんと食事も、寝るところも、休
みも、全部、ある……!!」
「でも、苦しそう。すごく」
「は……」
「お前が俺を殴るとき、すごく、苦しそうな顔して
る。すごく泣きそうな顔してる。アホか、気づい
てないと思ったか」
「苦しくないわけねえだろ、アホ…」
もとは白くて艶やかだっただろう肌は痩せこけ
て、アザだらけで。綺麗だっただろう金色の髪
の毛は血のカスがついてたり、土がついている。
すべて"だった"だ。きっとそうであったであろう"
過去"の事。なのにこいつは優しく笑って、敵の
俺を励ます。
「こんな怪我、すぐ治るんだよ。それに、俺は壊
れちゃいないし。お前が、気にすることじゃねえよ」
こいつは、こんな目に遭っても、なにも変わって
いない。ずっと強くて優しくて。



「戦争…?」
「俺の国と、てめえの国。」
「は?」
「そのまんまだ。だから、もう、会えないな」
それは日常会話のなかで教えられた。
出会いは大学。留学してきたのはこいつで、喧嘩
ばっかりでもいつも一緒にいた。
いつのまにか、そんな関係になれて、なのに。
始まってしまった。
「だから、俺、国に帰らないと。」
「大学は」
「やめるに決まってんだろ?そもそも敵の国の生徒
を置く訳ねえじゃねえか。大体お前も図体いいしあ
れじゃん?徴兵されるだろ、大学どころじゃねえよ」
「そうか……」
「どうせ、一年やそこらで終わる。また、会おうぜ」
「約束だ」
「はは、約束好きだな。てめえは」
そう言って幼くも指切りげんまんして。
キスして。別れた。



なのに。
こんな形で再会するなんて思わなかった。
捕まったお前、そんなお前に酷をさせる役の俺。
こんな、最悪な再会があるだろうか
「まぁいいや、おやすみ。ゾロ」
そう言ってこいつは眠りに落ちた
すっかり痩せてしまった背中を見ながら俺はな
にもすることがなく座ってるだけ
この戦争はいつまで続くのだろうか。
只の兵である俺らには今どっちが優位なのかも
どれくらいで終わりそうなのかも分からない
それまで俺はこいつが弱るところをただ見て過
ごしていくしかないのか


俺は、なにができる?


END





久しぶりのパラレルが暗すぎるw
これは昔書いたもので整理したら出てきたので
何となくあげてみました。

うーん本当にどうしたんだろうこれ。
きっとシリーズ化しようとして断念したんだと思います


でわ、お粗末さまでした


20120301 景夜.



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