1月14日   失言




「……もうてめえのメシなんか二度と食うか!!」


言ってからはっとした。自分が言ってしまった言葉
の重さに。目の前に立つこいつの顔が瞬間無表
情になったあのヒトコマを俺は一生忘れないだろう

「そう、か。……分かった」

今まで俺と同じ勢いで言葉を発していた口はもう
静かにしか動かない。
「じゃあ、お腹空いたらキッチン使っていいから。
食糧使いすぎんなよ」
そう言って洗濯かごを持ってラウンジから出ていく
こいつの背中にかけるべき言葉がそのときの俺に
は思い付かなかった。


「……あんたも、バカね」

謝るべきだって分かってるけど、言い方もわからな
いし。何よりもあれ以降あいつと向き合ってない。

「分かってる」
「もう、なに言ったか分かってるの?」
「…………」
「サンジ君のすべてを否定したのと同じよ」
「あぁ」
「あんたねぇ…!!」
「分かってる!!」

ナミの言葉は分かる、分かってる。でも、どうする
べきなんだろうか

"悪かった"って、もう謝った。ちゃんと頭を下げた。
でもあいつは困ったように笑って"怒ってないって"
って言って。
確かに、怒ってないのだろう。それはあいつの表
情をみてたら分かる。

「飯………」
「俺、が……作ったので良いのか?」
「すまなかった」
「………あ、うん。分かった」

そう言って普通に作ってくれた。でもいつも調理の
ときは見せる笑顔は消えててずっと無表情。
怖かった。
あんなにこいつの表情に怖い、なんて思ったこと
はなかった。


ただ、あいつが朝、女とホテルから出てきたから
自分で勝手に怒って。
自分で嫉妬っていうのは分かってるしそれを改める
気はないけどこいつがなにをしてたのか分からなく
て、でも話してくれなくて。
ただあの女がそういう商売をしているようなやつじゃ
なくて普通の女だったから。
自分でも酷い言葉をぶつけたのは記憶している、
でも何を言ったかわからない。

「てめぇそんなやつだったのか」
「違う!!だからっ…」
「もういい!!…汚らわしい。……もうてめえのメシなん
か二度と食うか!」

あぁ、確か。そんな感じだ。


「………」
「だからあんたはダメなのよ」
「……かも、な。」

ふと顔をナミの方に向けるとナミも悲しそうな顔を
してた。

「サンジ君の、あんな顔見たくない。ずっと、表情変
えないのよ」
「…悪かった」
「いつもヘラヘラしててたまにしつこいなぁって思っ
てたけど、でもそれもサンジ君だって思ったの」

そうだ。きっとあいつは女とそんなことをしてないんだ。
ただ、女に甘くてきっとなんか助けてやってたとか、
そんなところで。

「………ちゃんと謝ってくる」
「ん、」


甲板を縦断してラウンジの前のドアに立つ。
中から聞こえるトントン、包丁音。
このドアの向こうにあいつはいる。
言う言葉は決まってる


ガチャ



「おい、」
「………ゾロ」
「……*****、***」


END





な、に、こ、れ。
もう分かりません、自分でも
もうほっておいてください←

お粗末様です、本当に、
最後の終わらせ方は悩んだんです。これでも


20120124 景夜.




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